【権利書紛失】不動産の売買の際に、事前通知制度を利用できますか?

質問
不動産を売却する予定ですが、権利書を紛失してしまいました。

登記手続きを担当する司法書士から、本人確認情報を作成しなければならないと言われましたが、事前通知という制度は利用できないのですか?

回答:司法書士たかはし
買主様や仲介不動産会社さんの理解・負担・協力が現実的には必要となることから、通常は、売買を原因とする登記手続きには事前通知の制度を利用することはできないことになるものと考えます。


1.権利書を紛失した場合の一般的な手続き

不動産の売買など、権利書(登記済証や登記識別情報)を提出する必要がある登記手続きにおいて、紛失などの理由から権利書を提出できない場合には、通常、登記手続きを担当する司法書士が本人確認情報という書類を作成し、これを権利書の代わりに法務局に提出することになります。

これは、司法書士が売主様と実際に面談した上で、その際のやり取りの経緯や、提示された身分証明書等の資料などから、面談相手が登記簿上の名義人本人に間違いないと判断するに至った理由などをまとめた書類で、紛失した権利書の代わりに法務局に提出するものです。

本人確認情報の作成には一定額の費用がかかることから、特別な書類を作成しない別の方法で登記手続を進められないかということで、お問い合わせをいただくことが少なくありません。

実際に、権利書を提出できない場合に取りうる手続きには、法令上、事前通知という制度も存在します。

しかしながら、事前通知の制度は不動産売買の際には通常は利用されません。その理由は、この制度の特徴に由来するものです。そこで、まず、事前通知制度の特徴についてご説明したいと思います。

2.事前通知による手続きとその特徴

事前通知制度を利用する場合、この登記に必要な書類のうち、権利書以外のすべての書類を添付して、まず登記の申請を行ないます。

すると、申請の数日後に、法務局から売主様に宛てて通知がなされる扱いです。通知の内容は、「登記の申請がなされたこと」、「登記の申請が間違いなければ、申出書に実印を押印の上、管轄法務局に提出して欲しい旨」などです。

通知を受け取った売主様から、この通知に対する申出書が期限内に法務局に提出されると、他に不備がなければ買主様への所有権移転登記がなされることになります。

他方、売主様から申出書の提出が期限内になされなかった場合には、この登記申請は却下されることになり、登記名義は買主様に移転しないこととなるのです。

なお、申出書の提出期限は、法務局が通知を発送した日から2週間(売主様が海外在住の場合は4週間)となっています。

以上から、事前通知制度の特徴として、次の二点を挙げることができます。

【1】権利書以外の必要書類すべてを添付して登記申請を行わなければならないこと。
【2】通知を受けた売主様が管轄法務局へ申出書を期限内に提出する必要があること。

3.不動産売買の際に事前通知制度を利用できない理由

不動産売買の際に事前通知制度を利用できないことになる理由は、上記の事前通知制度の二つの特徴からご説明することができます。なお、以下の記述内容は、司法書士によって対応が異なる点がある可能性がございますので、その点ご留意ください。

3-1-1.二度、当事者が集まる機会が必要となる ‐1度目の立ち合い‐

特徴【1】から、権利書以外の必要な書類を、司法書士が売主様と買主様双方から預かる機会が必要となります。本人確認情報を作成しない場合であっても、司法書士の本人確認・意思確認の義務はなくなりませんので、通常は当事者双方にお会いし、面前で書類に署名・捺印していただき、書類をお預かりすることになります。

3-1-2.二度、当事者が集まる機会が必要となる ‐2度目の立ち合い‐

特徴【2】から、買主様から売主様への売買代金の支払い時期は、売主様から法務局に提出する申出書に不備がなく、かつ、申出書が期限内に確実に提出されることを確認できた時、となります。

その前に支払うと、買主様は、登記名義を移転できないリスク(売主様から法務局へ申出書の提出が期限内になされないことにより、登記申請が却下されるリスク)を負うことになってしまうためです。

そのため、この申出書は、売主様から直接法務局に提出するのではなく、司法書士までお持ちいただき、司法書士がその申出書に売主様の実印が押印され不備がないものであることを確認する機会を持つことになります。通常は、当事者全員が立会うことになります。また、この機会は、法務局から売主様への通知がなされた後でなければなりませんから、1度目の立会いと同時に行なうことはできません。

申出書に不備がないことを司法書士が確認したら買主様にその旨お伝えし、売買代金のお支払いをしていただくことになります。申出書は、そのまま司法書士が預かり、管轄法務局に提出します。

本人確認情報による手続きであれば1度の立会いですむ買主様と仲介の不動産会社さんに、通知書の発送から2週間以内の日に再度立会っていただくなどの対応が必要ですから、買主様と仲介の不動産会社さんにその点のご理解・ご協力をいただかねばなりません。

また、司法書士も立会いの回数と法務局へ行く回数が増えますので、その分の日当・交通費を売主様よりいただくことになります。

3-2.売買契約書の訂正や調印のやり直し

不動産の売買では、その売買契約書において、所有権の移転時期を「売買代金の支払いを受けた時」とする特約が付されているのが通常です。

ところが、先述のとおり、事前通知制度にて登記申請を行う場合には、代金の支払い時期は、登記申請後になされる法務局からの通知に対する申出書を確認した後となります。すると、この売買契約書をそのまま用いると、登記申請の時点ではまだ所有権が移転していないことになってしまいますから、このままでは所有権移転登記の申請を行なうことができません。

そこで、事前通知による登記申請の場合には、売買契約書の所有権移転時期に関する特約を削除したり、所有権移転時期に関する特約のない売買契約書に改めて調印したりするなどの対応が必要となります。

この対応には、買主様と仲介の不動産会社さんの協力が必要となります。大手の不動産会社さんの場合、売買契約書の内容の訂正を担当者個人で行うことが難しい場合もあり、当初予定していた日程を変更するなどの対応も必要となります。

3-3.買主様が融資を受けて不動産を購入する場合

買主様が融資を受けて不動産をご購入される場合には、事前通知制度の利用につき抵当権者が同意されないものと考えられますので、買主様の協力を得ることは期待できないものと考えられます。

4.本人確認情報の作成にご理解・ご協力を

以上のように、不動産の売買に際して本人確認情報の作成の代わりに事前通知制度を利用することは、本人確認情報作成について本来売主様が負うべき負担を、買主様や仲介の不動産会社さんにも分担してもらう、という意味合いがあるとも表現できます。

したがいまして、不動産の売買に際して事前通知制度を利用するには、買主様や仲介の不動産会社さんのご理解・ご協力も現実的には必要となりますが、買主様や仲介の不動産会社さんにとっては負担が増えるだけでなくメリットを見い出しにくいため、そのご理解・ご協力を得ることが難しいことから、不動産の売買に際して事前通知制度が利用されることはほとんどありません。

また、仮に事前通知制度を利用できたとしても、司法書士の立会いや法務局での手続きも二度になることから、日当・交通費を別途売主様からいただかねばなりませんので、売主様にご負担いただく費用は、本人確認情報を作成する場合と大きく変わることもありません。

不動産の売買に際して権利書を紛失された場合には、本人確認情報の作成にご理解・ご協力いただけますと幸いです。

なお、贈与や遺贈による所有権移転登記や抵当権抹消登記の際などには、事前通知制度が利用されております。

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