【数次相続】故人の死亡後に死亡した子に、相続人がいる場合の相続

質問
父が亡くなりました。
父の子は兄と私の二人でしたが、父の死後、父の遺産に関する遺産分割をする前に兄が亡くなっています。母は健在で、兄には妻とその間に生まれた子がおります(下図参照)。

この場合、父の遺産についての遺産分割協議は、誰が行なえばよいのでしょうか?

また、父名義の不動産についての相続登記に必要となる書類について教えてください。

回答:司法書士たかはし
お父様の遺産についての遺産分割協議には、相談者様及び相談者様のお母様のほか、お兄様の奥様と、お兄様夫婦のお子様も参加する必要があります。

この場合のご相続登記の必要書類は、通常のご相続の際の必要書類に加え、お兄様について出生までさかのぼった戸籍謄本・除籍謄本も必要となります。


kankeizu

1.数次相続とは

故人(被相続人)の死後、その遺産について遺産分割協議をする前に相続人がお亡くなりになった場合数次相続と呼びますが、この場合、被相続人の遺産についての遺産分割協議には、誰が参加すべきでしょうか。

ふたつの相続が発生した数次相続の場合、先に発生した相続(一次相続)の相続人のうち生存している方のほか、後に発生した相続(二次相続)の相続人もまた、一次相続の被相続人の相続人となります。

ご相談の事例では(上図もご参照ください)、先にお父様Aがお亡くなりになり(一次相続)、その後、お父様Aの相続人の一人であるお兄様Cがお亡くなりになっていますので(二次相続)、一次相続の相続人のうち生存しているお母様Bと相談者様Xのほか、二次相続の相続人であるお兄様の奥様Dとお兄様夫婦のお子様Eも相続人となり、計4名がお父様Aの相続人となるのです。

遺産分割協議は、相続人の全員で行わなければなりませんから、参加者はお母様B、相談者様X、お兄様の奥様D及びお兄様夫婦のお子様Eの計4名で行なうことになります。

なお、この場合のそれぞれの法定相続分は、お母様Bは2分の1、相談者様Xは4分の1、お兄様の奥様Dは8分の1(お兄様Cの相続分4分の1の2分の1)、お兄様夫婦のお子様Eは8分の1(お兄様Cの相続分4分の1の2分の1)となります。

ここで、もしお兄様夫婦のお子様Eが未成年であった場合には、お兄様の奥様Dは、自身も相続人の一人として遺産分割協議に参加する立場であるため、お兄様夫婦のお子様Eの代理人としてこの遺産分割協議に参加することは利益相反となりできません。この場合は、家庭裁判所に、お兄様夫婦のお子様Eの特別代理人を選任してもらい、その特別代理人がお兄様夫婦のお子様Eに代わり遺産分割協議に参加することになります。

なお、被相続人の子が、被相続人のお亡くなりになる以前にお亡くなりになっている場合は「代襲相続」と言い、結論が異なります。詳しくは次のページをご参照ください。

2.ご相談事例の数次相続の場合の相続登記に必要な書類

ご相談の事例でご相続登記(相続による不動産の名義変更)を行なう場合に必要となる書類は、次のとおりです。

【一次相続の被相続人に関する書類】父A
1.登記簿上の住所以降の住所変更の経緯が記載された戸籍の附票又は住民票の除票
2.出生からお亡くなりになるまでの戸籍謄本・除籍謄本

【二次相続の被相続人に関する書類】兄C
1.出生からお亡くなりになるまでの戸籍謄本・除籍謄本

【相続人に関する書類】母B、相談者X、兄の妻D、兄夫婦の子E
1.現在の戸籍謄本
2.印鑑証明書
3.現在の戸籍の附票又は本籍地の記載のある住民票
4.遺産分割協議書 ※実印による押印のあるもの

3.ご相談事例の数次相続の場合における相続登記のお手続

数次相続では、発生したそれぞれの相続について登記の申請をすることが原則となりますが、中間の相続(最終の相続以外の相続)が単独相続となる場合には、その中間の登記申請を省略し、1件の申請書で登記申請することができる取り扱いです。

「中間の相続が単独相続となる場合」には、中間の相続人が文字通り一人の場合だけでなく、遺産分割協議の結果や、他の相続人の相続放棄、特別受益により他の相続人に相続分がない、といった理由から結局一人が相続することになった場合も含まれるとされています。

中間の相続登記を省略することにより、登録免許税を重ねて納付しなくとも良くなることから、数次相続の場合に中間の相続登記を省略できるかどうかを検討することには、重要な意義があります。

ご相談の事例の場合における相続登記のお手続は、遺産分割協議の結果、不動産をどなたが相続されることになるのかによって異なり、1件の登記申請で良い場合と、2件の登記申請が必要となる場合とに分かれます。

3-1.生存している一次相続の相続人のみが相続する場合

遺産分割協議の結果、一次相続の相続人で生存している方が不動産を相続することになった場合、すなわち、ご相談の事例では、お母様Bや相談者様Xが単独又は共有でご相続される場合には、一回の登記申請で不動産の名義を変更することができます。

登記申請書に記載する「登記原因」は、「年月日(※お父様Aのお亡くなりになった日)相続」と記載して、1件の移転登記を申請します。

この場合には遺産分割協議書として、不動産をお母様Bや相談者様Xが単独又は共有で相続する旨の記載のあるものに、お母様B・相談者様X・お兄様の奥様D・お兄様夫婦のお子様Eが実印を押印したものを、登記申請書に添付するのが通常です。

3-2.二次相続の相続人のみが相続する場合

遺産分割協議の結果、二次相続の相続人が不動産を相続することになった場合、すなわち、ご相談の事例では、お兄様の奥様Dやお兄様夫婦のお子様Eが単独又は共有でご相続される場合には、中間の相続登記を省略し、一回の登記申請で不動産の名義を変更することができます。

登記申請書に記載する「登記原因」は、「年月日(※お父様Aのお亡くなりになった日)C相続 年月日(※お兄様Cのお亡くなりになった日)相続」と記載して、1件の移転登記を申請します。

この場合に登記申請書に添付する遺産分割協議書の作成方法には、(1)最終的な遺産分割協議の結果のみを記載する方法と、(2)中間の相続についての遺産分割協議の結果についても記載する方法、の二通りがございます。それぞれの一般的な具体例は次のとおりです。

(1)お兄様の奥様Dやお兄様夫婦のお子様Eが単独または共有で相続した旨の記載のあるものにお母様B・相談者様X・お兄様の奥様D・お兄様夫婦のお子様Eが実印を押印しているもの1通を用意する。

(2)一次相続においてお兄様Cが単独相続した旨の記載のあるものにお母様B・相談者様X・お兄様の奥様D・お兄様夫婦のお子様Eが実印を押印しているものと、二次相続においてお兄様の奥様Dやお兄様夫婦のお子様Eが単独または共有で相続した旨の記載のあるものにお兄様の奥様D・お兄様夫婦のお子様Eが実印を押印しているものの計2通を用意する。

3-3.一次相続の相続人と二次相続の相続人が共同で相続する場合

珍しい事例かとは思いますが、遺産分割協議の結果、一次相続の相続人と二次相続の相続人が共同で不動産を相続することになった場合、すなわち、ご相談の事例では、お母様Bや相談者様Xの片方又は双方と、お兄様の奥様Dやお兄様夫婦のお子様Eの片方又は双方との共有でご相続される場合には、一回の登記申請で不動産の名義変更をすることはできません。

まず、一次相続の登記として、登記申請書に記載する「登記原因」を「年月日(※お父様Aのお亡くなりになった日)相続」とする、お亡くなりになったお兄様Cを含む一次相続の相続人名義に名義を変更する移転登記を申請します。

この登記申請書に添付する遺産分割協議書は、不動産をお兄様Cを含む一次相続の相続人が共有で相続した旨の記載のあるものに、お母様B・相談者様X・お兄様の奥様D・お兄様夫婦のお子様Eが実印を押印したものをご用意することになると考えられます。

次に、二次相続の登記として、登記申請書に記載する「登記原因」を「年月日(※お兄様Cのお亡くなりになった日)相続」とする、お兄様C持分を二次相続の相続人名義とする持分移転登記を申請することになります。

この登記申請書に添付する遺産分割協議書は、お兄様の奥様Dやお兄様夫婦のお子様Eが単独または共有で相続した旨の記載のあるものにお兄様の奥様D・お兄様夫婦のお子様Eが実印を押印しているものをご用意することになると考えられます。

4.大変な数次相続のお手続きのご相談をお寄せ下さい

数次相続の場合には、相続人の数が多くなり、相続人間の人間関係も希薄であることが少なくありませんから、そのような状況下で遺産分割協議をし、その遺産分割協議書を正確に作成したうえで実印を押印してもらい、印鑑証明書を用意してもらうのは、骨の折れる作業となりかねません。

また、数次相続ではない相続の場合と比べますと、集めなければならない戸籍謄本・除籍謄本等の種類・数が多くなりますから、ご自身で不足なく収集するのは容易でなく、またお時間もかかります。

遺産分割協議書や戸籍謄本の取得等にお時間がかかりすぎますと、さらに次の相続が発生して相続人が増えてしまう可能性をも考慮しなくてはならない場合もございます。

さらに、登記申請の件数を省略できるかどうかを正確に判断し、登記申請書に反映できなければ、登録免許税を節約することができません。

以上から、数次相続が発生している場合のご相続のお手続をご検討されておられる皆さまには、専門家にご相談なされることを強くおすすめ致します。

当事務所にご依頼くださいましたら、必要な戸籍謄本等の迅速な収集、遺産分割協議書の作成、相続人の皆さまへのご捺印と印鑑証明書取得のご依頼、適切な申請件数による登記申請、これらすべてをお任せいただけます。

ご相続登記、銀行口座のご相続等のお手続をご検討中の皆さまからのご連絡を、心よりお待ちしております。

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